2013年10月21日月曜日

ぼくは船長







王様とこじき号が我が家に来てから今日までに
3回海に浮かんだ。


船が出せる場所の開拓目的で、毎回違う場所でのエントリー。

海の荒れ方や風向きの変化で、どの場所なら安全か、どの時間から危険かなどの
データを蓄積しなければいけないのだ。

もちろんソコに居る魚種や海底地形の把握も釣果に直結する。
引き出しは多い方がイイ。


釣れた魚は
アジ フグ サッパ クロ(メジナ) チャリコ(真鯛の幼魚)などなど。
今のところボウズ無し。毎回何かしら釣れる。

天気も、気持ちいい晴天、突然の雨、曇り空、台風接近による強風、台風通過後のうねり残り…

色んな海の表情に触れる事が出来た。
風の力、潮の力、月の引力による干満。

色んな力が僕の王様とこじき号に作用する。
大きな海の偉大な自然の力が
我がままで欲張りな僕の小舟に優しく強く働きかける。

アンカーの効きを確認しながら
僕は船を波に揺られるままにする。
とても自由な気持ちになれる。

ひらひらと何か飛んで来た。
へえ 海の上にも蝶がいるんだ。
どこかへ向かう途中なのか帰り道なのか。

         crosby stills nash & young - on the way home


黒っぽい蝶は僕のボートを眺めるようにくるりと一周して
またどこかへ飛んで行った。それぞれの時間の途中で
すれちがっただけの僕ら。それでもかすかな友情を持つには充分だ。



「よい旅を」








さて、これからどうしようか。
陸地に漕ぐか。沖に漕ごうか。このままここに留まるのもいいだろう。
全部自分で決めるのだ。
釣り竿だって出すのも出さないのもどっちでもいいのだ。


すごく楽しい時間になるか 

それとも 危険を伴い 

あらゆる人を巻き込む

ひどい結果になるのか






全ての責任はぼくに或る。







2013年10月3日木曜日

殺し屋の影



簡単だけど進水式。
酒屋がまだ開いていない時間だったので
コンビニで買えるお酒と、家から持って来た塩で航海の安全祈願。

ボートの準備に慣れないので、あれこれやりながら進水まで1時間近くかかる。
さて発進。よーそろー。
膝まで海に入り船を離岸させてからボートに飛び乗る。
浮かぶのは分かってたけど、いざ穏やかな湾内の水面に滑り出すと
ちょっと感動してしまう。すいーって進む。

適当なところでアンカリングして釣り開始。
魚探もないし、ポイントも分からん。釣れなければ場所を移ればいいのだ。
好きなところに。誰も邪魔しない。
サビキ仕掛けの竿を下ろして、もう一本の竿の準備をしてるところで

ガタガタ

って音がしたので振り向いたら
仕掛けを入れてた竿がぐんぐん曲がって落ちそうになってる。
あらよっとリールを巻いて
記念すべきボート一匹目はまあまあのサイズのアジ。

波止場から釣れるアジゴとはサイズが全然違う。100メートルくらいしか
距離変わらんのに。

その後はまったく釣れない時間が続き、時折思い出したようにアジが釣れた。
途中キスを追加して風が強くなる前に撤収。
だいたい福岡は午後になると北西の風が強くなります。


アジは刺身とナメロウにして、キスは衣付けてカリッと焼く。
子供食べる。美味しそうな顔をすると嬉しい。


しかし気になるのは、小魚を針に付けたまま泳がせていた時の事…
スズキでも喰ってこないかなーとぼけっと竿を見ていた。
普段はぴょこんぴょこんと竿先を曲げるだけの小魚が
急に

ビクビクン

と暴れだした。
「来やがったな 奴さん」と焦る気持ちを冷静な言葉で装っていると
いきなり竿が根元から曲がって海面に突き刺さる!
いち、にの、さんで合わせを入れるとズシン
手元に来るはずの感触が無い。


喰いついた魚はハリスをスパッと切り裂いて逃げた。



アイツが回ってきやがったか…


王様とこじき号

船を買った。
ゴムボートだ。
インフレータブルボートとも言う。
要するに膨らむボートだ。膨らむという事は
空気を抜けばしぼむ事を意味する。
収納と運搬上有利だ。



子供の頃から釣りが好きだった。
川でフナを初めて釣った時から、40を5ヶ月ほど過ぎた今日まで
釣りと僕はともに有った。
そして、これからもだ。

大きな海に浮かぶこの小さい船の上で僕は釣りまくり
世界の理を知った王の様に、全能感に満ちあふれ尊大に振る舞うだろう。

また或る時は、何をやっても上手くいかずに
「ホント何でもいいんで釣らせて下さい。フグでもエソでも喜んで釣らせて頂きます。お願いします。お恵みを」と
母なる海に乞食のように懇願するだろう。


2013年10月3日。
僕が船長を務めるこの船は初めて海に浮かんだ。
王様とこじき号と名付けた。